風の時代を生きるーー「考えること」

どっぷりとスピリチュアルなものに傾倒するタイプではないが,何か宇宙全体の流れの中で人が暮らしているという感覚は皆無ではない。どうも年末あたりから,意識的に何かしっかりと作業をしていれば問題ないが,少し気を抜くとずるずると倦怠感に飲み込まれ,だらだら過ごしても何か疲れが取れる感じがしない。何かいつもと違う感じがするなと,いろいろ調べたり聞いたりしていたところ,「風の時代」というキーワードが舞い込んできた。

グレートコンジャンクション

西洋占星術の中で木星と土星が重なり合う状態をグレートコンジャンクションといい,それは20年に1度起きるらしい。そして,このグレートコンジャンクションが今までは地の星座のエリアで起きていたが,それが2020年12月22日以降,風の星座のエリアで起こるようになるのだと。そして,このエリアの移行は240年(250年とも)に一度のことなんだとか。とにかく,宇宙の星の位置がこれまでとは随分と変わるということのよう。

地の時代から風の時代へ

グレートコンジャンクションが起きるエリアが地の星座から風の星座に変わることで,私たちの世界にも大きな変化が起きるということらしい。大まかに言ってしまえば,形あるものを重視する物質主義だった「地 Earth の時代」から,形のないものが意味をもつようになる「風 Air の時代」への移行が起きるのだと。「風の時代」をWebで調べると,占星術関係を中心として沢山の記事が見つかった。何か形あるものに頼れる状況ではなくなり,想像力や思考力,柔軟性が重要視されるようになるとのことだ。情報や横のつながりが大事で,いかに情報を選別し,まとめあげ,取り込んでいくかということが必要なスキルになってくるらしい。

風の時代のキーワードは考えること

なかでも,占星術師のステラ薫子さんがインタビュー(風の時代,運を味方につける秘訣とは?)で答えておられたことが印象的だった。ステラ薫子さんのことは知らなかったが,風の時代のキーワードとして,「考えること」を挙げ,考えるために必要なのは「学ぶこと」「書くこと」だと述べておられた。考えること,書くことの重要性は,私がこのHPを作成した動機でもあったし,ここにぽつぽつと考えていることを書き始めて,書くため,考えるためには「学ぶこと」が必要なのだと実感した。

学ぶこと,話すこと,書くこと

そもそもフロイトが「エスの在るところに,自我を在らしめよ」と言ったように,精神分析の目指す作業は感情や思考を言語化することであり,一次過程思考(無意識)を二次過程思考(意識)に引き上げることである。フロイトは精神分析の技法として,トーキング・キュア(お話し療法)を発展させた。そして,彼自身,フリースへの手紙を通して自己分析を進め,彼は自分の考えたことを沢山の文章として書き残した。彼は書くことが思索を深めることを無意識的に(もしかしたら意識的に)知っており実践していたのだろう。

話すこと,書くことには必ず言語化が必須である。だから,話したり,書いたりしていれば,二次過程の思考(考えること)が自然と立ち上がって来るとも言えるし,話したり書いたりするためには二次過程の思考が必要だから,それも当然のことでもある。

・二次過程の思考機能によって,話す・書くが可能になる
・話す・書くことによって,二次過程の思考(考える)が立ち上がる  

学ぶこと,話すこと,書くことは,二重螺旋のように相まって,考えることを可能にし,人を人たらしめていく,人に深みを与えていくのであろう。

何より,人は考えているつもりでも,ただ不安に飲み込まれて同じことを頭でぐるぐると繰り返しているだけだったりもするわけで,「考えてみる」よりは,「話してみる,書いてみる」という行動から入ってみる方が分かりやすく,確実である。

風の時代と精神分析

ステラ薫子さんは,「学ぶこと」で自分の好きなことが見つかり,「書き続けること」で自分を見つけることができる,と。様々な方の記事を総合してみると,風の時代は自分は何が好きで,何を幸せと感じるか,どんなふうに生きていきたいのかを自分軸が必要になるようだ。自分の考えを持ったり,必要に応じてそれをきちんと表現することや,話し合うこと,客観的な視点を持ち,柔軟な発想力と生き方をするなどと言ったことが,共通して述べられてもいる。

そこで精神分析の登場である。精神分析は「考えること」を大推奨している。そして,自分らしくあること,自分を生きていくこと,自分の考えで判断し動くことといった自立,を目指したものだと理解している。奇しくも,風の時代に必要とされる「考える力」と同じではないか!見えないものを大切にしなければならない時代が来るとすれば,それは心や感情,人との繋がりといったものを大切にしなければならない時代とも言える。

「風の時代」を迎えるにあたり,改めて自分も自分軸をぶらさず,しっかりと「考えること」を目指したいし,それを周りの人とも共有したいと思う。

精神分析では考えることに大きな価値をおいており,自ら考えて動く力の獲得がゴールとも言える。そう思うと精神分析の心理療法を生業とできることを嬉しく思う。そしてまた,自分もそれを目指すと同時に,自分が風の時代を生きる術を獲得するお手伝いをしているのだと思うと,少し身の引き締まる思いがした。(書き始めた時には意図しなかったが,本年の決意表明のような年始っぽい〆になってしまった。。。)