「最悪を想定する」が逆効果になる理由|建設的な不安との付き合い方

今回は,「最悪を想定しておくほうが安全だから」と言いながら,実際には不安に飲み込まれてしまう人たちについて考えてみたいと思います。
最悪の事態を想定することは大切です。しかし,想定することと,不安に支配されることは全く別のことなのです。
心配性の人,不安が強い人ほど,この違いを知っておくことが重要です。

『最悪を想定する』ことの2つの顔

最悪を想定することには,2つの全く異なる側面があります。

一つは建設的な想定です。

「もし〇〇が起きたら,こう対処しよう」
「△△にならないように,今からこういう準備をしておこう」というように,想定が具体的な行動や準備につながっていく場合です。これは現実をしっかり見据えた上で,できる範囲の対策を考えるという意味で,とても健全な心の働きです。

もう一つは,防衛としての悲観主義です。

最悪を想定することで,「ほら,やっぱり私は現実的だ」「私は甘く見ていない」と自分に言い聞かせているものの,実際には不安に圧倒されてしまい,何も建設的な方向に向かわない状態です。
想定することそれ自体が目的になってしまい,そこから先に進めないのです。

最悪の想定が逆効果になるとき

たとえば,職場で新しいプロジェクトを任されたとします。

建設的に最悪を想定する人は,
「うまくいかない可能性もある。では,どんなリスクがあるか洗い出して,それぞれに対策を考えよう」

「困ったときは誰に相談できるか確認しておこう」――というように動きます。
この状態は,不安を感じながらも,それを行動のエネルギーに変えていくのです。

一方,不安に飲み込まれてしまう人は,
「きっと失敗する」
「周りからダメだと思われる」
「評価が下がってしまう」と悪いシナリオを延々と頭の中で繰り返します。
このように,最悪の想定が止められなくなり,強迫的に考え続けてしまう状態では,「最悪を想定している」と本人は思っているものの,実際には想定が具体的な準備につながらず,ただ不安が増幅していくだけなのです。

そしてここには,もう一つ大きな問題が隠れています。

悪いシナリオを考えることに時間とエネルギーを奪われてしまい,本来できたはずの準備や挑戦ができなくなってしまいます。

「失敗したらどうしよう」と考え続けるうちに,実際に必要な準備をする時間がなくなる。
あるいは,「どうせうまくいかない」という思いが強いと,やろうと思っていたことを諦めてしまったり,魅力的なお誘いを断ってしまったり
―—つまり,最悪を想定することで,かえってチャンスを逃してしまうのです。

想定が逆効果になる具体例

たとえば,職場で新しいプロジェクトを任されたとします。同じ「最悪を想定する」でも,その結果は大きく異なります。

建設的に最悪を想定する場合:

  • 「うまくいかない可能性もある。では,どんなリスクがあるか洗い出して,それぞれに対策を考えよう」
  • 「困ったときは誰に相談できるか確認しておこう」

このように,不安を感じながらも,それを行動のエネルギーに変えていくことができます。

不安に飲み込まれてしまう場合:

  • 「きっと失敗する」
  • 「周りからダメだと思われる」
  • 「評価が下がってしまう」――このように悪いシナリオを延々と頭の中で繰り返します。

こうなってしまうと,最悪の想定が止められなくなり,強迫的に考え続けてしまう状態では,「最悪を想定している」と本人は思っているものの,実際には想定が具体的な準備につながらず,ただ不安が増幅していくだけなのです

そしてここには,もう一つ大きな問題が隠れています。

悪いシナリオを考えることに時間とエネルギーを奪われてしまい,本来できたはずの準備や挑戦ができなくなってしまいます。

  • 「失敗したらどうしよう」と考え続けるうちに,実際に必要な準備をする時間がなくなる
  • 「どうせうまくいかない」という思いが強くなって,新しいアイデアを試すことを諦めてしまう

―—最悪を想定することで,かえって機会を失ってしまうのです。

建設的な想定と防衛的な想定を分ける要因

この2つの違いは,どこにあるのでしょうか。

一つの鍵は,「想定した後に何をするか」です。
建設的な想定は,必ず「では,どうするか」という問いにつながります。
一方で,防衛としての悲観主義は,想定すること自体で止まってしまい,次の行動が見えてきません。

もう一つの鍵は,不安との距離感です。
建設的に考えられる人は,不安を感じながらも,それに完全に支配されることなく,「不安もあるけれど,今できることをやろう」という姿勢を保てます。
しかし不安に飲み込まれてしまう人は,不安と自分の間に距離がなく,不安=自分の全てになってしまうのです。

「最悪を想定する」を上手に使うために

では,どうすれば建設的な想定ができるようになるのでしょうか。

1. 「想定した後,私は何をするのか」と自分に問いかける

もし答えが「何もしない」だったり,「ただ心配する」だったりするなら,それは建設的な想定ではなく,不安に飲み込まれている状態かもしれません。

2. 完璧な対策を求めすぎない

「完全に失敗を防ぐ方法」を探し始めると,かえって身動きが取れなくなります。「これをやっておけば,少しはマシになるだろう」くらいの,ほどほどの準備で十分なのです。

3. 不安を感じること自体は悪いことではないと知っておく

不安は,私たちが何か大切なことに向き合おうとしているサインです。問題は不安があることではなく,不安にどう付き合うかなのです。

さいごに

「最悪を想定する」という言葉の裏には,実は全く異なる2つの心の状態が隠れています。

建設的な想定は,現実を見据えながら前に進む力になります。
一方,防衛としての悲観主義は,前に進むことを妨げ,本来得られたはずの機会さえ奪ってしまいます。

もし自分が「最悪を想定している」と感じたとき,
少し立ち止まって,「で,私はこれから何をするのだろう?」と問いかけてみてください。

その問いが,不安との新しい付き合い方への第一歩になるかもしれません。

明日へ

次回は,なぜ「悪い予感」が現実になってしまうことがあるのか,その心理的なメカニズムについて考えてみたいと思います。