「平気で嘘をつく人たち」と「その場しのぎの嘘をつく人たち」

随分前に「平気で嘘をつく人たち」という本が流行りました。ここでは「平気で嘘をつく人たち」と「その場しのぎの嘘をつく人たち」をパーソナリティ障害や発達障害との関連から考えてみました。

嘘については「虚言癖」という言葉がありますが,虚言癖についていくつかのパーソナリティ障害が関わってくる可能性があります。しかし,同じ嘘であっても,平気で嘘をつく人たちとその場しのぎの嘘をつく人たちの病理は別ものとして考えていく必要があるように思います。

平気で嘘をつく人たち
演技性パーソナリティ障害

まずは演技性パーソナリティ障害,この人たちは自分をよりよく見せたいという思いで,見栄を張りたくて(本人は「見栄」だとは思っていませんが)嘘をついてしまいます。故意に自分で意識しながら嘘をついていることもあれば,本人は自分が嘘をついているという自覚はなく,妄想が入っている場合もあります。

妄想性パーソナリティ障害

妄想性パーソナリティ障害。この人たちは嘘をついているつもりではなく,現実ではないことを本人は現実だと思い込んで話していますが,結果的には外から見れば嘘を言っているということになります。

反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティ障害。この人たちは自分の利益のためであれば,それこそ空気を吸うように嘘をついてしまいます。そこに罪悪感はなく,ときには詐欺のような犯罪に関係してくることもあります。
サイコパスは医学的用語ではありませんが,パーソナリティ障害と野関連で言えば,反社会性パーソナリティ障害と深い関連があるように思います。

その場しのぎの嘘をつく人たち

一方で,その場しのぎの嘘をつく人たちは,回避性パーソナリティ障害や先を見通すことが苦手な発達の偏りを持つ人たちに多いように思います。

回避性パーソナリティ障害

回避性パーソナリティ障害の人は,嫌なことからは逃げるのが特徴なので,「やるやる!」と言ってやらなかったり,「行く!」と言って行かなかったりします。本人は最初から嘘をつくつもりがない場合もあるのですが,結果としてはこれも嘘となってしまいます。また怒られたくない,注意されたくないが故に嘘をついてしまうこともあります。

発達障害

同じように発達障害の一部の人は,先を見通すことができないので,とにかくその場さえ何とかなれば良いという思いから,衝動的に,とっさにその場しのぎの嘘をつくことがあります。

そして,衝動的にその場その場で思っていることを話してしまいますが,彼らは気分や考えていることがころころ変わってしまいます。その瞬間には本当にそう思っていても,次の瞬間には違うことを考えていたりもして,他の人から見れば,彼らは時間が繋がっていないようにすら感じます。散らばっているカルタを取って読み上げているような感じと言えばよいでしょうか。そのために,結果として「さっきのは嘘だったのか」「この前は○○って言っていたのに」という風に周りからは嘘つきと思われることも少なくありません。しかし,彼らに「嘘をついている」という自覚もなければ,嘘をつこうとしているわけでもありません。

まとめ

このように考えてみると,「平気で嘘をつく人たち」と「その場しのぎの嘘をつく人たち」の病理はかなり違うように思います。
平気で嘘をつく人たちの場合には,あまり関わらないようにするのが賢明です。
一方で,その場しのぎの嘘をつく人たちについては,あまり相手を怖がらせないように穏やかに関わる必要があり,特に発達障害の場合にはその特性を理解して,つきたくてついている嘘ではないという部分も加味して関わっていく必要がありそうです。