つらい状況から抜け出したあと…
今回は,長く続いていた緊張状態から解放されたあとに起こる,少し不思議な心の動きについて書いてみたいと思います。
こういう経験をしている人は,意外と多いのではないでしょうか。
終わりは,意外とあっさりと
長く続いていた緊張状態から,ある日ふっと解放されることがあります。
自分から離れる決断をする場合もあれば,
状況が偶然に動いて,気づいたらそこから外れていた,ということもあるでしょう。
仕事でも,人間関係でも,何らかの役割でも構いません。
終わりのやり取りは驚くほどあっさりしていて,拍子抜けするほど簡単に終わることもあります。
あれほど重かったはずのものが,ふわりと手を離れていく。そんな感じです。
その瞬間,解放感がないわけではありません。
「やっと終わった」「もう耐えなくていい」――そんな安堵が,確かにあります。
肩の荷が下りる。深く息ができる。そんな実感はちゃんとある。
すっきりしない,という不思議
けれど同時に,言葉にしにくい,少し奇妙な感覚が重なって現れることがあります。
辛くて大変だった島から,貨物船に乗って抜け出した,
―—それは,自分で逃げ出したのかもしれないし,迎えが来てくれたのかもしれません。
船底から甲板に上がってみると,広い空と海があなたを迎えています。

自由になった。もう島には戻らなくていい
―—けれど,その広さの前で,ぼうっと立ち尽くしている。そんな感覚です。
何かを失った感じとも違います。後悔しているわけでもありません。
でも,自由になったはずなのに,気持ちは軽いようで,どこかすっきりしない。
軽くなっているのは確かなのに,体の奥に,冷えのようなものが残っている。
つらい思いがなくなって,そこにぽっかり穴が開いている。
風が通り抜けていくような,少し寂しいような,そんな感覚です。
晴れているのに,なんだか空気は冷たい―—そんな矛盾した気持ちが,静かに同居しているような感じかもしれません。
緊張が解けたときに,初めて疲れが出る
強い緊張のただ中にいるとき,人はあまり疲労を感じません。感じる余裕がないからです。
走り続けているあいだは,足の痛みに気づかない。立ち止まって初めて,体中が悲鳴をあげていたことに気づく。そんなふうに。
疲れや違和感が表に出てくるのは,安全になった,その瞬間から。
張りつめていたものがゆるむと,それまで抑え込まれていた感覚が,解放感と一緒に,まとめて立ち上がってきます。
この感じは,失敗や弱さとは少し違うように思います。
むしろ,長いあいだ「ちゃんと耐えていた」ことの反動のようにも思えます。
もう終わった,もう戻らなくていい―—その事実を,心と体が追いかけている途中なのかもしれません。

長いあいだ張りつめていたということは,それだけ長く闘い続けていたということでもあります。
気づかないうちに,心も体も消耗していた。今,ぼろぼろになっているのは,当然のことなのかもしれません。
傷ついているから,回復が必要です。
でも,ぽっかり空いたその場所は,そのままにしておきましょう。何かで埋めなくてもいいと思います。
なくてよいものが,なくなっただけなので。
そこまで耐えてきた自分に,「よく頑張ったね」「お疲れさま」と声をかけてあげてもいいのではないでしょうか。
その空白も,冷えのような感覚も,長いあいだ闘ってきたことの証のようなもの。それをそのまま感じていることが,回復の一部なのだと思います。
今は不思議な感覚があるかもしれません。軽いのに重い,解放されたのにすっきりしない,そんな矛盾したような気持ち。
けれど,この感覚はずっと続くわけではありません。時間とともに,少しずつ馴染んでいきます。
春の雪が,いつの間にか溶けていくように。冷たかった空気が,少しずつ温かくなっていくように。
心と体が,新しい状態に慣れていくのを,そっと見守ってあげましょう。
今は,ただ休んでいい。ただ,そこにいるだけでいい。

いまもまだ,つらい状況の真っただ中にいる,「留まるべきか,離れるべきか迷っている」というあなたには,「我慢か撤退か,つらいと感じたら考えるべきポイント」について触れた記事が参考になるかもしれません。

