「自分と向き合う」ことの大切さ

「これまで自分と向き合ってこなかった…」というフレーズがあります。自分と向き合う作業は,生きる意味を見失ったときや,これからの生き方に迷ったときに,まず取り組むべき重要なプロセスです。今回はこのテーマについて考えてみたいと思います。

自分と向き合うとは?

自分と向き合うとは,自分の内面を深く理解し,自己認識を高めることを指します。カウンセリングの時間は,まさにこの自己理解を促進する貴重な場でもあり,具体的には,自分の感情や思考,価値観を把握し,それらを理解することが含まれます。

自分を知ることの重要性

ところで,あなたはどれくらい自分のことを知っているでしょうか?
多くの人は,自分についてあまり深く考えたことがないものです。カウンセリングにおいても,「自分はどんな人ですか?」とお尋ねすると,「こういう風に言われる」と他者からの評価を説明する方が多く,自分自身の具体的な特性についてはあまり出てこないことがよくあります。自分のことが分からず,それを知りたくてカウンセリングを希望されてくる方が多いので,これは当然のことです。
しかし,自分について知らなければ,自分がどのように人と関わるべきか,どう生きていけばよいかが分からなくなってしまいます。そのため,自己理解を深めることは,今後の人生の方向性を考える上でとても大事なことです。自分を知ることで,他人との関係や自分の行動に対する理解が深まり,より良い選択をする助けとなります。

言語化による自己理解

では,自分を知るためにはどうしたらよいのでしょうか?
自分を知るには日記を書いてみるとか,内省する時間を持つなどの方法もあるのですが,ひとりでこれをやるとネガティブな方へどんどんと進みがちで,余計に精神状態が悪化してしまうこともあります。そうしたリスクには注意が必要です。一人で考えるとどんどん自分を責めてしまう,自分が歪んだ考えの持ち主のように感じてしまうという人は,専門家のもとで安全に自己理解を進めていく方法が有効です。
また,一人でやる場合も,カウンセリングにおいても重要なのは,「言語化する」,つまり「言葉にする」というプロセスです。頭の中だけでぐるぐる考えるのではなく,しっかりと言葉にするために文字にするということが大事です。

対話による自己理解

そしてもう一つ,自分を知るうえで大事なことは,人と関わる,人と話すということです。人と話すことは自己理解への近道です。なぜなら,人と話すことで必然的に頭にある考えを言語化することになるからです。まずその時点で自分の考えが整理されてきます。
さらに,自分の思っていることと話したり,人が考えていることを聞いたりする中で,「自分と同じ考えだな」あるいは「自分はそう思わないな」という感じを体験することで,自分を知っていくというプロセスが進んでいきます。

語らう二人
最後に

物の使い方を知りたいとき,物が壊れたときには取扱説明書が役立ちます。自分についても,他人についても,自分を知っておくこと,相手を知っておくこと,人間ってどういうことを考えるものなのかを知っておくことは役立つことだと思います。
自分を知ることは,生きやすくなるための第一歩です。自分の弱点を理解すれば,それに対処する方法や対策を考えることができます。
何かしらのもやもや,悩みを抱えているとき,生きていることがつまらないと感じるとき,これからどうやって生きていこうかと思い悩んでいるとき,まずは,自分と向き合い,自分を知る…という難解ではあるけれども,役に立つ作業に取り組んでみてください。