「考えない」という生き方

「考えること」がこころ穏やかに強く生きていくことを支えるという,私の心理臨床での信念とも言える考え方の対極ともいえる,「考えない」という生き方,考えないという防衛の在り方について,思ったことを少し書いてみました。

考えること

心理臨床に携わる上で私は「考えること」が身を守る,穏やかに平和な心持で生きていくには「考えること」が大事であると考えています。というのも,起きたこと,過去のこと,現実…は何も変わらないけれど,「考えること」によって,捉え方,理解の仕方によって,なんとでも気持ちや感情は変化させることができると私は思っているからです。
そして,いろんなことを感じたり,考えたりすることこそ生きていることの醍醐味であり,そうすることで人生は深みが増すと思うのです。

「考えない」という生き方は無敵?

一方で,その対極に「考えない人」「感じない人」という人がいます。「それって無敵だなー」と思うことがあります。何も感じなければ傷つかないし,悩むこともないのだろうなあと。
もちろん,誰にでも悩みはあるのでしょう。でも,少なくとも自分がいま抱えている問題に対して,相手は「何も感じてないんだろうなー」って思ったりするときに,そんな気分になるわけです。

強いストレス状況にさらされると,そうやって「考えないこと」「感じないこと」…こういった状態を作り出すことで,身を守るということもあり,それは「時に」必要なことだったりもします。
しかし,これを多用してしまう生き方にはなんだか空しさを感じます。というのも,悲しいことや辛いことを感じないということは,楽しいことや嬉しいことも感じづらくなってしまうからです。

何のために生きているのか

確かにこんなに傷ついて辛い思いをするなら,いっそ生まれてこなければよかった,出会わなければよかった,という気持ちになることもあれば,もう何も考えたくないし,感じたくもない,無味乾燥な世界でドライに淡々とこころを閉ざして生きていきたいと思うこともあります。そして,「(こんなに辛い目にまであって)何のために生きているのか」「生きている意味って何だろう」って考えてしまうことも多いのではないかと思います。
でも,これを読まれているということは,なんらかの事情でこの世に生を受けてしまっているわけです。だとしたら,どうせ生まれてきてしまっているのなら,その分,とても嬉しかったり,いろいろなことに温かい感謝の気持ちを抱けるような,そんな瞬間があることをイメージして,「考え」「感じて」生きていったほうが良いのではないかというのが,私の個人的な思いです。

辛いこともあるけれど

生きていることに意味があるかどうか,といったことについて思うことはいろいろとあるのですが,ひとまず今日の話の中では,「生きていることの意味は自分で作り上げていくもの」,「辛いこともあるけれど,そうじゃない,神様に感謝したくなるような素敵な出会い,抱きしめたくなるような温かくて素敵な瞬間をひとつでも二つでも経験すること」ではないかな,と思ったりもします。
生きていると,辛いことも悔しいことも,悲しいことも,寂しく思うこともたくさんありますが,それだけではありません。
そんなにたいそうなことではなくても,たとえば,面白いと思う映画やアニメ,小説や漫画,気分の上がる音楽,アイドル,自分の好みにぴったり合うスニーカーや洋服,小物に出会ったとき,くすっと笑えるような,ほっこりするようなXのポストやYouTube,Tik Tokを見たとき,そんなちょっとした瞬間や出会いに,何かふっと心が緩んで和んだりすることありませんか?
そんな瞬間をいくつか重ねていくことができれば,それが生きていることの意味ではないでしょうか。もちろん,こう思えるのは比較的こころが安定している,健康な時なのですが,でもそんな温かくて柔らかな気持ちを感じられることもあるということが,生きていることの意味だって考えられれば,もう少し頑張ってこの生活を続けてみようって思えるかもしれません。

生きている意味なんてない!って思うとき

そうは言っても,これを読まれているこの瞬間,あなたの心はそんな風に思えないほど,傷ついていたり,疲れていたりするかもしれません。誰にだってそういうときもあります。
もしそうだとしたら…。ひとりで抱えていないで,誰か,…こういうとき,誰でもいいわけではありません。ちゃんと,この人だったら優しく話を聞いてくれるんじゃないかと思う人に思いを話してみてください。
そういう相手がいらっしゃる場合は,これより下は読む必要がありません。

でも,周りにそういう人が見つからなければ・・・。そういう場合には,お金を出して,そしてあなたと利害関係のない,上下関係のない,対等な立場であるセラピストを頼って話してみるのもひとつです。
もちろん,私でよければ申し込みフォームでご連絡ください…とまるで宣伝のようになってしまうのですが,いろいろ人間関係に悩みを抱えた場合に,近くに相談できる人がいないんだという状況は多いと思うのです。
だからこそ,私のようなお仕事にある程度の需要があるのだと思います。たくさんのセラピストがあなたの周りでカウンセリングを提供していると思いますので,ひとりで抱えきれないときは連絡をしてみてください。