心理療法終結の目安

心理療法は,どうなったら終われるのか。私は,「不安がまったくなくなったわけではないけれど,当初の生きづらさは相当ないし,そろそろ面接がなくてもやっていけると思う」というクライエントさんの感覚をまずベースに,心理療法の終結を考えることが多いと思います。そのうえで,「終わりたい」という願望が,心的現実からの逃避ではないことが互いに共有されれば,終結について考えていきます。そのうえで,面接が終わること,面接を喪失すること,セラピストと別れることへの「喪の作業」の期間を取って十分にとって,面接を終わっていきます。

ちなみに,Freud(1937)は,患者がもはや様々な症状,不安,制止に苦しまなくなること ,不安や障害の克服 ,抑圧されたものの意識化,理解しえなかったものの解明 ,内的抵抗の除去,病理的な過程の反復への恐れの解消を終結の条件とし,Klein(1950)は,迫害的不安と抑うつ不安の徹底的な吟味の 結果,自我の深みと強さが増すことを終結の目安としています。

また,より具体的なところでは,Lemma,A. (2015)は「Introduction to the Practice of Psychoanalytic Psychotherapy」の中で,心理療法の終結の条件として,以下のものを挙げています。

・症状がある程度軽減しているか

・対人関係の質が変化しているか(葛藤を認め,防衛機制を適宜柔軟に使いながら対処できるようになっているか,自分とは異なる相手として,相手の自律性を認めて付き合えるようになっているか,自らの攻撃性を認め,償いたいという願望と共に罪悪感を体験し,後悔の念を抱けるようになっているのか),

・三者関係が持てるようになっているか(エディプスコンプレックスを克服し,三者関係に移行しているか)

・現実に向き合えているか (自らの欲求不満や失望,羨望を適切に処理できているか,万能感を手放せるか,欠点を認められるようになっているか)

・自分の感情について内省できるようになっているか(葛藤を認め,適切に対応できているか,衝動性や行動化に頼らず不安を抱えられるようになっているか)

・仕事関係の対人関係がこなせるようになっているか(同僚とうまくやり,仕事に没頭し過ぎず,自分の考えや不安に対処できるようになっているか),

・遊んだり楽しんだりできるか(無意識的空想と現実の移行空間に入って,創造性を発揮できるか)

・冗談を楽しめるようになっているか(欠点を認める能力や寛容さを持てているのか,抑うつ不安に対処できることにも繋がる)

臨床をやっていても,納得のいく条件ではないかと思います。