理不尽なこと
世の中に溢れている「理不尽なこと」について,どう考えてみるのかということについて書いてみました。
理不尽にはどのように対処するのか
臨床の現場でもよく考えることなのですが,世の中は理不尽なことに満ちています。以前,ぷんぷんと理不尽なことに怒りまくっていたら,「世の中は理不尽なもの,それで良しとせよ」と言われたことがあります。確かにそうなのかもしれません。世の中に理不尽があってはならないなんて,ルールはないのですから。
しかしながら,理不尽な現実にどう対応するのか,それがその人の生き方を示すものとなるように思いますので,非常に重要なことだろうと思っています。
理不尽なことに対してどう向き合うのかと言えば,基本的には,「ほどよく諦めて,でも腐らず,自暴自棄にならず,感情任せで衝動的に動かないようにして,考えること(思考すること)を止めないで自分の道を静かに強く歩いて行く」ということでしょうか。少しくどいようですが,抽象的に言えばそんなことなのかなと思っています。でもこのほど良く諦めること,腐らないこと,考えるのをやめないこと,どれをとっても難しいものです。
また,これは抽象的考え方なので,実際,目の前で起きている出来事に対してどんなふうに対処するかということはその時々,ケースバイケース。主張して闘うこともあれば,あえてそうせずに距離を取ることもあるでしょう。
実際に理不尽な目に遭うと
理不尽な現実に出遭うと,腸(はらわた)は煮えくり返るし,血行が悪くなって手足は冷たくなるし,
ときには血圧が一時的に下がって立っているのも難しくなり,迷走神経の反射でお腹を一瞬でくだしてしまうこともあります。酷い時には吐き気がすることすらあります。
たぶん,押し込まれた理不尽や怒り,悲しみ,そうしたものを身体から外に排出したくなるのでしょうね。思わず,世界が終わってしまえばいい,地球が爆発してしまえばよいと思う瞬間の一例はこういうときかもしれません。
こういうことに遭遇したことのない皆さんは幸せに生きておられるのかもしれません。
言語化の力と考えること
さて,アンガーマネージメントなどが巷では流行っていますが,あれは衝動性をいかに抑えるかというところに重きが置かれているようにも思います。
怒りが湧いた瞬間に何秒間かを数えてみるというのは確かに爆発的に衝動をまき散らすことには役立つと思うのですが,やはり怒りは波のようにぶり返してきてしまうようにも思います。
私はやはり,こういうときには「言語化」「考えること」で理不尽さを乗り越えるしかないのだろうと思っています。そのためには,人に聞いてもらうこと,または思いを文章にしてみること。それが手っ取り早い道。そう思って,まずはこの文章を書き出してみました。
少し落ち着いたかって?そうですね,既に人にも話を聞いてもらいましたし,少なくとも書いている間は,獣のように訳の分からない叫びをあげたくなるような衝動は抑えられました。
どうして人は怒るのか
人が怒るときということの代表的な一例は,自分の尊厳を傷つけられたとき,自分が大事にしているものを軽んじられたときなのではないかと思います。
あなたの何が傷ついたのでしょう。確かに「傷つけられた」のかもしれませんが,じっくりゆっくり考えてみてください。相手があなたを軽んじようと,無碍に扱おうとそれは相手の問題です。あなた自身の尊厳に傷を負うひつようはないので安心してください。
世の中には理不尽が溢れています。でもそういったことばかりでもありません。自分の限られた時間をどんな感情で,どんなふうに過ごしていくか,そうした大切なことをじっくりゆっくりと冷静に考えて見なければなりません。
最後に
「あら,先生も何か理不尽なことがあって怒っているのね,こんな気分になることがあるんだ」って思った方もおられるかもしれませんね。それは想像にお任せいたしましょう。しかしながら,私も皆さんと同じ,怒りもすれば落ち込みもする人間です。当然生きていれば皆さんと同じようにいろんな思いがあるのです。時にはこういう思いも書いてみても良いのかなと思いました。
さて,昨日は少し時間があったので,2021年に本屋大賞を受賞して評判の高い「52ヘルツのクジラたち」という町田その子さんの小説を読みました。来年には杉咲花さんの主演で映画化されるようです。
この作品は,仲間のくじらたちには聞こえない52ヘルツの周波数でしか音を発することができず,無限に広がる大海で孤独に生きているくじらをモチーフにした物語です。周りの人に理解されづらい,届きづらい声を聴くべき仕事をしていることを思い,身が引き締まる思い,より一層センサーを幅広く,遠くまで届くようにしてクライエントさんのお話に丁寧に耳を傾けなければならないという気持ちになりました。虐待やトランスジェンダーなど難しい問題を取り扱っている作品でしたが,また気が向いたら何か感想を書いてみたいと思います。
最後までお読みいただき,ありがとうございました。