レム睡眠と創造性
創造性というのは何かと何かをくっつけて,新しいものを生み出すことです。レム睡眠中の脳の状態は創造性を発揮するのに適していて,夢の中には問題を解決に導くヒントが沢山はいっているのです。今回はそんな夢と創造性の繋がりについて書いてみました。
レム睡眠下の脳の状態
夢をみるときの睡眠の状態をレム睡眠と言います。睡眠や夢を研究しているStickgold(1999)によると,夢を見る時のレム睡眠中には,新しい結びつきを探索するのに向いているのだそうです。
レム睡眠下の脳は,論理をつかさどる前頭葉のスイッチが切れており,新しい記憶を保管する海馬へのアクセスができません。
そのため,古い記憶の保管庫へとアクセスするので,起きている時とは別のことを思いつきやすいのです。このように,起きている時には再現できない何かが起きているのだそうです。だからこそ,夢の中では起きているときには浮かばないような解決法やアイディアが浮かんだりするのでしょう。実際,前述した研究では,人は起きているときよりも,夢から覚めた直後の方が,言葉の連想の幅が広かったという結果も出ています。
夢から生まれたアイディア
夢の中でアイディアが浮かんだという芸術や科学的発見は挙げればきりがありません。ベートーヴェンやビートルズのポール・マッカートニーには夢の中で閃いて作った曲がありますし,沢山の映画には監督が夢で見たという光景が盛り込まれており,フランケンシュタインもメアリー・シェリーが見た夢のおかげで生まれました。メンデレエフが元素周期表を,そしてケクレがベンゼン環を着想したのも夢のおかげです。
夢を憶えておくには
夢の中の情報を活用するには夢を憶えておく必要があります。でも,夢は起きた瞬間には覚えていても顔を洗ったりトイレに行ったりするだけで忘れてしまうのです。ただし,まずは夢を「憶えておこう」と思うだけでも夢を記憶できる確率は上がります。あと,日中,夢のことを1分でも2分でも考えてみたりするだけでもその確率は格段に上がるそうです。さらには見た夢を文字にして残しておくようにすると,ますます夢を憶えておけるようになるので試してみるとよいかもしれません。
夢判断を著したフロイトは夢を「無意識への王道」とし,患者の無意識を知るのに夢を活用しましたが,その後,夢を積極的に活用することで生きるのに必要なヒントが見つかるという研究が数多く発表されています。次回は夢の効用について書いてみたいと思います。