性格神経症とは|心の葛藤が性格に現れる生きづらさの理由

「神経症」と聞くと,不安発作や潔癖,強迫行為などの「症状」を思い浮かべる人が多いかもしれません。
けれども,神経症的な心のあり方は,必ずしも症状として現れるとは限りません。むしろ,人の性格そのものの中に,心の葛藤や防衛が組み込まれていることがあります。これを「性格神経症」と呼びます。

症状神経症との違い

精神分析の創始者フロイトは,神経症には大きく分けて2つのあり方があると考えました。

区分特徴具体例
症状神経症心の葛藤が症状として現れる強迫行為,パニック発作,身体症状(頭痛や吐き気など)
性格神経症心の葛藤が性格や行動パターンとして現れる完璧主義で疲れる,人に合わせすぎる,怒りを抑える

症状神経症では,症状自体が苦痛の中心になります。
一方,性格神経症では,生き方や人間関係そのものが自分を苦しめることが多くなります。

性格が防衛のかたちになっている

性格神経症では,性格の傾向が無意識の防衛として働きます。
たとえば…

  • 愛されない不安を避けるために「魅力的であろう」とする(ヒステリー的)
  • 不安を避けるために「秩序」と「正しさ」を追い求める(強迫的)
  • 失敗が怖いから新しいことに挑戦しない(回避的)

これらはかつて自分を守るために必要だった「工夫」です。しかし,大人になっても過度に繰り返されてしまうと,対人関係や生き方の中で行き詰まりや生きづらさの原因になっていることがあります。

臨床的な理解と構造

精神分析的には,性格神経症は神経症構造に属します。構造というのは,簡単に言うと,心の設計図のようなもの,心の基本的な働きや葛藤のパターンを表したものです。

  • 神経症構造の心の中の葛藤は完全に無意識ではなく,自我の統合や現実検討力が保たれた状態で存在しています。
  • そのため,自分の心の葛藤や不安をある程度意識して,ある程度コントロールすることができます。

神経症構造には,ヒステリー構造(ヒステリー性格神経症)や強迫構造(強迫性格神経症)などのタイプがあります。

性格神経症の下位分類(ヒステリー・強迫・回避タイプ)

性格神経症には,心の葛藤や防衛の現れ方によっていくつかの下位分類があります。
代表的なものは,ヒステリー性格神経症(ヒステリー構造)強迫性格神経症(強迫構造),回避型性格神経症です。それぞれの特徴や日常で見られる行動の例を見てみましょう。

1. ヒステリー型性格神経症(Hysterical Character Neurosis)
  • 特徴
    • 感情表現が豊かで,周囲の注目を強く求める
    • 内面の葛藤を身体症状や演技的行動で表現することがある
  • 日常での例
    • 会議や友人との集まりで,注目を集めるために大げさに話す
    • 体調不良を強調して,周囲に心配してもらおうとする
    • 感情の起伏が激しく,周囲が振り回されることがある
2. 強迫型性格神経症(Obsessive Character Neurosis)
  • 特徴
    • 秩序や正確さ,完璧さを重視
    • 内面の不安を計画や制御で管理する
  • 日常での例
    • 机や書類をきっちり整理していないと落ち着かない
    • 仕事や家事のやり方にこだわり,柔軟に対応できない
    • 他人のミスに過剰に反応し,注意や指摘を繰り返す
3. 回避型性格神経症(Avoidant Character Neurosis)
  • 特徴
    • 他者からの批判や拒絶を避ける傾向
    • 内面の不安を孤立や回避でやわらげようとする
  • 日常での例
    • 人前で発言するのを避け,重要な会議や集まりを欠席する
    • 失敗を恐れて,新しいことに挑戦しない
    • 自己評価が低く,他人の評価に過敏になる

パーソナリティ障害とのちがい

性格神経症」とは前述のとおり,フロイトが神経症を症状神経症と性格神経症の二つに分類する際に使用した用語で,本人の性格の特徴と結びついた神経症のことを指しています。性格神経症はあくまで神経症レベルの問題です。

それに対して,「パーソナリティ障害」という言葉は,現代の診断基準であるDSM(精神障害の診断・統計マニュアル)で使われるもので,性格の持ち方自体が極端で,社会生活や対人関係に困難をもたらす状態を指します。

自分の内面を振り返ったり,葛藤を意識したりすることが可能ですが,パーソナリティ障害は,神経症レベルよりもう少し厄介な境界例レベルの問題とされます。

たとえば,自分のことや他者のことを「良いか悪いか」の極端な両極端でしか捉えられないなど,自己や他者のイメージが分裂的で不安定になり,感情のコントロールができなかったり,長期にわたる対人関係の維持が難しくなります。
この違いは,問題の深さや構造レベルの違いとして理解されます。

まとめ

  • 性格神経症とは,性格そのものに心の葛藤が組み込まれている状態
  • 症状としてではなく,性格のパターンとして現れる
  • 性格は無意識の防衛として機能している
  • 性格神経症には,ヒステリー型・強迫型・回避型などのタイプがある
  • パーソナリティ障害とは問題の深さや構造レベルが異なる

性格神経症の理解は,「症状をなくす」ことよりも,自分のあり方の背景にある意味を見つめ直すことから始まります。


桜心理カウンセリング恵比寿では,自分を生きづらくしている「防衛」を少しずつ手放していくことで,より自由な生き方への第一歩を踏み出すお手伝いをしています。