ネット依存・ゲーム依存ーー病院に行くタイミング

ゲーム障害の診断基準について,ゲーム障害が脳に与える影響,そしてネット依存やゲーム依存の人が病院に行った方がよいタイミングについての記事です。

ゲーム障害は精神疾患のひとつです

ネットやゲームをやりすぎて生活に支障が出る状態が長く続いていることを言いますが,WHOでは「ゲーム障害」を精神疾患の診断ガイドラインICD-11に含めました。

ICD-11での診断基準は次の通りです。

  1. ゲームをする時間や回数など,ゲームについて自分をコントロールできない
  2. 日常生活の中でゲームが最優先になっている
  3. 対人関係や仕事・学習,健康状態に問題が生じているにもかかわらず,ゲームを継続したり,より一層エスカレートしてゲームをしている
  4. これらの行動パターンが明らかな苦痛や,個人,家族,社会,教育,職業や他の重要な機能分野において著しい障害を起こしている

この4項目が12ヵ月以上続く場合に診断する。しかし,4症状が存在し,しかも重症である場合にはそれより短くとも診断可能となりました。

脳の働きが変わるーー快楽を感じづらくなる

ネットやゲーム依存の状態が続くと,アルコール依存症の人たちや認知症の人たちと同じように脳の機能の仕方に変化が表れます。
たとえば,ゲームの刺激によって,社会的・理性的判断に関わる前頭前野の機能が低下し,冷静な判断が下せなくなり,衝動的になってしまうことが分かっています。
また大脳基底核にある「報酬系」と呼ばれる反応が欠乏が見られることなどが分かっています。報酬系というのは刺激から快楽を感じる働きをしますが,ゲームの刺激によってドーパミンの受容体が減り,脳が快楽を感じづらくなると言われています。そしてゲーム以外のことには関心が低下してしまうのです。
大脳新皮質の灰白質の神経細胞が破壊され,脳の損傷や委縮に繋がるとも言われています。

受診したほうがよいタイミングは

ゲーム依存ではないかとこのページを訪れた方のほとんどの方が,上に挙げた診断基準の①には当てはまってしまうと思います。
なので,次にチェックをする状態として

  • 学校や職場,家族などの対人関係が崩れている
    • たとえば,攻撃的な言動が増えたり,暴力を振るったり,家族との会話の減少,ネットやゲームに関して嘘をつくようになる
  • 健康状態の悪化が見られている
    • たとえば,食生活の乱れ,たとえば食べないので栄養不足で痩せたり,動かないので太ったりすることもあります。そして服装や入浴しないなど衛生面の乱れ,イライラして怒りっぽくなていたり,不安になりやすかったり,不眠など。
  • 学校や職場での社会生活に支障が出てきている
    • たとえば,学校での成績の低下や遅刻や欠席,職場でのパフォーマンスの低下や遅刻,欠勤など

ゲーム障害と診断される病気の範疇に入ってくるので受診を考えてみてください。
ただ注意をしなければならないのは,ゲーム依存には本人の自覚がなく,家族が気づくことがほとんどです。ですが,ここであまり過度に叱ったりすると対人関係を悪化させてしまいます。強く叱らずに,まずは家族だけでも早めの受診を検討しましょう。

ゲームやネットを取り上げるのはNGです

また突然ゲームやネットを取り上げたり,ブレーカーを落としたりということをすると,本人のオンライン上で積み上げた成果や築いた人間関係の崩壊となります。依存症の本人にとって「ゲームがすべて」なので,それを取り上げれば精神の崩壊にも繋がりうる暴力的行為と受け取られ,強烈な反発を招くことにもなりかねません。なので,一旦それは避けましょう。

家族が病んでしまう前に

ただ,どうしても目の前で,昼夜逆転してだらだらとゲームで夜中に大声を挙げて叫んだり笑ったりしているのに,学校に行かない,会社に行かないといった本人を見ていると家族の方がうつっぽくなってきたりもします。そういう時にはご家族がまずはカウンセリングを受けてみるのも選択肢のひとつです。
ご家族の不安や不満を受け止めてもらえるところがないと,どうしてもその苛々を本人にぶつけてしまいがちになるので,依存症や本人の心の理解のためにもまずはご家族が相談できる場所を作ることも大事です。
また依存症からの回復には家族の協力が不可欠です。まずはご家族は依存症の理解から始めましょう。